大阪万博跡地とカジノ:夢洲の未来はどうなる?

万博

2025年4月13日から10月13日まで開催される大阪・関西万博。

その舞台である大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」は、万博終了後の活用計画が注目を集めている。

特に、万博会場に隣接するエリアで進行中の日本初の統合型リゾート(IR)施設、つまりカジノを含む一大プロジェクトが話題だ。

この記事では、大阪万博の跡地利用とカジノを中心とした夢洲の未来について、背景や期待、課題を掘り下げてみる。

 大阪万博と夢洲の役割

大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、150以上の国と地域が参加する国際的なイベントだ。

会場となる夢洲は、約390ヘクタールの広大な埋め立て地で、甲子園球場約100個分に相当する。

この人工島は、かつてバブル経済崩壊で開発が停滞した「負の遺産」とも呼ばれたが、万博とIRの計画により「国際観光拠点」として生まれ変わろうとしている。

万博の会場面積は約155ヘクタールで、その中心部約50ヘクタールが跡地利用の対象となる。

一方、会場北側の約49ヘクタールでは、2030年秋の開業を目指してIRの建設が進行中だ。

このIRは、カジノだけでなく、国際会議場、高級ホテル、ショッピングモール、エンターテインメント施設などを備えた複合施設として計画されている。

 万博跡地の活用計画

大阪府と大阪市は、万博閉幕後の跡地を「エンターテイメントシティ」として再開発する基本計画を2025年2月に発表した。

この計画では、跡地を4つのエリアに分割し、隣接するIRと連携しながら「非日常空間」を創出する方針だ。

具体的なゾーンは以下の通りである。

  • ゲートウェイゾーン:商業施設や観光の玄関口となるエリア。
  • グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン:サーキット場、ウォーターパーク、ラグジュアリーホテルなどを整備し、国際的なモータースポーツ拠点やリゾート施設を目指す。
  • IR連携ゾーン:カジノを含むIRと一体感のある開発を進める。
  • 大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーン:万博のテーマである健康や医療に関連した施設を想定。

特に注目されるのは、グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン内の「スーパーアンカーゾーン」で、ここでは「世界最高水準のエンターテインメント機能」を導入する計画だ。

例えば、F1レースが開催可能なサーキットや、世界クラスのウォーターパークが候補に挙がっている。

これらは、万博の理念である「健康と長寿」を継承しつつ、観光客を引きつける「非日常」を演出する狙いがある。

 日本初のIR:カジノの全貌

夢洲の北側で進むIRは、米国のカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが共同で設立した「大阪IR株式会社」が運営を担う。

施設の概要は以下の通りである。

  • カジノ:IR全体の床面積の3%以内に限定。スロットマシンやカードゲーム、ルーレットなどが楽しめる。
  • 国際会議場:6000人以上を収容可能な大規模施設。
  • ホテル:約2500室の高級ホテル3棟。
  • その他:ショッピングモール、レストラン、エンターテインメント施設、大規模バスターミナル。

初期投資額は約1兆2700億円で、年間2000万人の来場者(うち外国人600万人)を見込む。

売上は約5200億円(カジノ事業4200億円、非カジノ事業1000億円)と試算され、税収として大阪府市に約700億円が還元される見込みだ。

また、約1万5000人の雇用創出も期待されている。

2024年10月には土地が引き渡され、IRの建設は2025年4月24日から始まるようだ。

万博開催中は騒音や景観への影響を最小限に抑えるため、大型重機の使用を控えるなどの配慮がなされている。

 カジノに対する期待と懸念

期待される経済効果

IRの最大の魅力は、観光振興と地域経済の活性化だ。

大阪はすでにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や梅田の商業施設など、観光資源が豊富だが、IRの開業により「国際的な観光拠点」としての地位をさらに強化できる。

特に外国人観光客の増加が見込まれ、インバウンド消費の拡大が期待される。

実際、ラスベガスやマカオではカジノが観光の中心となり、周辺産業にも大きな経済効果をもたらしている。

また、IRは万博のインフラ整備を活用することで、事業者側のリスクを軽減できる。

万博のために整備された交通網(地下鉄延伸やシャトルバスなど)は、IRへのアクセスを容易にし、夢洲を「単なる埋め立て地」から「万博跡地」というブランド価値の高いエリアに格上げする。

課題と批判

一方で、カジノには多くの懸念が寄せられている。

主な課題は以下の通りである。

  • ギャンブル依存症:カジノは射幸心を煽る施設であり、依存症の増加が心配されている。日本人客には入場料6000円と入場制限(週3回、月10回)が設けられるが、これで十分な対策と言えるのか疑問の声もある。
  • 治安の悪化:カジノは犯罪やマネーロンダリングのリスクを伴う。府市は監視体制の強化を約束しているが、具体的な効果は未知数だ。
  • 公費負担:夢洲の土壌汚染や液状化対策に約255億円、地盤改良費として最大788億円が大阪市負担とされ、税金の投入に批判が集まる。維新の会は当初「IRに税金は使わない」と公約していたが、この方針が覆されたことで信頼が揺らいでいる。
  • 経済効果の不確実性:年間2000万人の来場者や6兆円の賭け金を前提とした試算は、マカオやラスベガスの実績を上回る非現実的な数字との指摘がある。コロナ禍でオンラインカジノが普及する中、物理的なカジノの集客力に疑問が投げかけられている。
  • 万博との理念の不一致:万博は「健康と長寿」を掲げるが、カジノはギャンブル依存やストレスを助長する側面があり、理念に反するとの批判がある。建築家の安藤忠雄氏も、IRとのセットに抵抗感を示したと報じられている。

 夢洲の未来と課題

夢洲の開発は、万博とIRを軸に大阪の経済再生を狙う壮大なプロジェクトだ。

しかし、その成功は多くのハードルを乗り越える必要がある。まず、万博自体の成否が重要だ。

2025年4月時点で前売り券の販売が目標(1400万枚)に遠く及ばない約746万枚にとどまるなど、盛り上がりに欠ける状況が続いている。

万博が期待ほどの集客を達成できなければ、IRへの期待感も薄れかねない。

また、夢洲の地理的な課題も無視できない。

市街地から遠く、周辺に商業施設やオフィスが少ない孤立した島であるため、継続的な集客には強力な魅力が必要だ。

人手不足も深刻で、IRの運営には大量のスタッフが必要だが、すでに大阪のサービス業は人手不足に直面している。

これがIRの足かせになる可能性もある。

 市民の声と今後の展望

SNSや報道からは、万博とIRに対する賛否両論がうかがえる。

賛成派は「大阪の経済を飛躍させるチャンス」と捉え、反対派は「税金の無駄遣い」「カジノは不要」と批判する。

特に、万博がIRのインフラ整備の「隠れ蓑」と見なされる向きもあり、透明な情報開示が求められている。

大阪府市は2025年度後半に跡地開発の事業者公募を開始し、2030年のIR開業と連動した開発を進める計画だ。

夢洲が「ドリームアイランド」として輝くか、それとも新たな「負の遺産」となるかは、今後の運営と市民の支持にかかっている。

 まとめ

大阪万博の跡地とカジノを中心とした夢洲の開発は、大阪の未来を左右する一大プロジェクトだ。

観光振興や経済効果への期待は大きいが、依存症や公費負担、集客の不確実性など、課題も山積している。

万博の成功とIRの魅力的な運営が、夢洲を「世界が憧れる観光地」に変える鍵となるだろう。

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